「飲み会の席でお酌をする」は悪しき慣習！

年も明け、私がコーヒーショップでパソコンを叩いていると、隣のテーブルでは二人のサラリーマンが会話をしていました。盗み聞きをするつもりはありませんでしたが、耳栓をしていない以上、否応にも聞こえてきてしまいました。（ですから、社外では迂闊に機密情報を話してはいけませんよ。今回はただの雑談でしたが。）

会話の内容はいたって普通のものではあったのですが、いかにも過ぎて萎えました。

なんでも……
この前の飲み会の席で、新入りが上司とテーブルを囲んでいるにも関わらず、お酌はしないし、鍋を取り皿に配らないし、あいつはヤバイ。
……とか何とか。

人間の性？

はい、実にくだらない話ですね。その会話をしていたのは20代ぐらいのサラリーマンだったのですが、やはり、現代においてもサラリーマンはサラリーマンですね。慣習にひれ伏し、そこに馴染めない（あるいは馴染むつもりのない）者を常識のない不埒者（ふらちもの）と嘲笑う。そして、そんな意味不明なバイアスによって、自分たちはまともな人間であると自己肯定し、安堵する。実に人間らしい人間だと思います。彼らみたいな人間が、気がつかないままに社会を蝕み、日本という国を陰険に染め上げてしまうのでしょう。これぞ集団心理。お酒を飲んでいないのに吐き気がしました。

なぜ、お酌をしなければいけないのか？

なぜ、上司にお酌をするべきなのでしょうか？
彼らはその理由を考えたことがあるのでしょうか？
相手が年配者だからお酌をする？
相手が上長だからお酌をする？

そうですね……立場が上の人間にはお酌をする……それが彼らなりの処世術なのかもしれません。ですが、そんなことは知ったこっちゃありません。仮に、お酌をしないと殺される時世であるのならやむを得ないと割り切れますが、私の知る現代日本は、そんな物騒な国ではありません。お酌をするかしないか、したい相手かどうか、それは個人の判断に委ねられるべきでしょう。労働者は会社と（理念的には）対等に契約を結んでいるのであって、業務に関係ないところでも隷属する奴隷ではありません。

お酌をしないことは悪いことなのか？

新入りがお酌をするかしないかをそんなに気にしていたのであれば、見ていた彼らが、その新入りさんにマナーを教えてあげるなり、代わりにお酌をしに行くなりすれば良かったんです。件の新入りさんは単に無知なのか、スタンスがあるのかは分かりませんが、悪いことなんてしていないのですから。

上司に気に入られるつもりのない人は、お酌をする必要はありません。もし、それが原因で上司に嫌われるのであれば、上司はその程度のことで人の価値を決める愚か者であるという事実が判明するだけの話です。社内いじめが行われるようであれば、労働局に相談するなり、退職して新しい職場を探した方がマシです。

会社の飲み会は義務ではない

会社員が契約時に課せられた義務は、労働の提供と、会社への貢献であって、上司に気に入られることではありません。もし、お酌をすることも仕事の一貫であると主張するのであれば、時間外労働として、その分の手当てを支払わなければいけません。

中には、お酌をしないとコミュニケーションが図れないというボンクラもいるかもしれません。もし本当にそんな意見を言う人がいたならば、その人物はコミュ症未満の存在です。飲み会にうつつを抜かすよりも、仕事中にコミュニケーションを取る努力をすべきです。

常識とは何なのか？

社会の常識は、必ずしも正解ではありません。
社会の常識は、必ずしも正常ではありません。
社会の常識は、必ずしも正論ではありません。

このケース以外にも言える話ですが……常識という檻に囚われ、気がつかないままに人に理不尽を押し付けてはいませんか？　別に、知らない人に教えてあげることは良いことですよ。しかし、必要性のない行為を強要したり、あるいは貶めようとするのは間違っています。常識やマナーは守るべきものである一方で、ずっと同じカタチを保ち続けるべきものでもありません。古くから続く伝統や慣習が、悪しき行いになるなんて話は、あらゆる物語で目にするではありませんか。時代の移ろいに合わせて、決まり事は変化しなければならないのです。このような考え方をできる人が増えれば、社会は優しくなっていくことでしょう。